2012年8月28日火曜日

世論調査のトリック

「対テロ戦争」は早くも泥沼化の様相を呈し始めていますが、初期段階で、アメリカの空爆を支持するかどうかの世論調査アンケートが行われたとき、朝日新聞は支持率40パーセント台、読売新聞は80パーセント台とかけ離れた数字が発表されました。こうなると、サンプルが本当に無作為に選ばれたのか、データの改ざんはないのか、と疑いたくなります。まあ、それはないだろうと好意的に見たとして、この差はどこからくるのでしょう。

 朝日では、「アメリカが‘報復’を始めましたが、‘このような’行動を支持しますか」という言いかたをしているのに対し、読売は「テロに対するアメリカの軍事行動は‘やむをえない’と思いますか」というニュアンスだったと思います。答えはここにあります。つまり、アンケートの文面に作為的な誘導が見られるのです。ごく普通の人の感覚では、「やみくもな報復は、罪なき民間人の犠牲を伴い、報復の連鎖を生むだけだから反対、しかしテロを放置してよいはずがなく、テロを封鎖・壊滅させるための軍事力なら行使もやむなし」というように条件によって答えは変わるでしょう。その「条件」の部分をチラチラとちらつかせることによって、うまく誘導しているのです。


 少々誤爆ぐらいあっても、とことんやるべきだ、というタカ派も、どんな卑劣なテロに対しても力の論理は行使してはいけないという人道派も、日本では、それぞれ少数であるのが実態なのにあたかも一方が過半数を占める多数派であるかのように読者は思いこんでしまう恐れがあります。「海外旅行の経験があるか、ないか」といった単純な二者択一ならアンケートもいいでしょうが、微妙な判断を要する問題に、そもそもアンケートはなじまない気がします(ブッシュにとってはアメリカの味方かテロの味方かの二者択一ですがね)。内閣支持率の胡散臭さについても何をか言わんやです。

 マクロな視点で大勢を判断するためにアンケートを利用する、その有効性を全否定するつもりはありませんが、少なくとも表面的な数字を鵜呑みにする前に、アンケート項目の内容は知っておかないと、マスコミに振り回されるということです。(明確な主張を持つ人なら、うかつにアンケートに答えるより、真摯な議論が繰り広げられている良質なサイトへの投稿という手段を選ぶでしょうね)

 不特定多数の回答者による無記名のアンケートは「その他大勢」に紛れて、無責任で短絡的、性急で直情的な結論につながりやすい、と見ていいでしょう。そのことを十分承知していればこそ、マスコミは自説に都合のよい方向へと世論を導くためにアンケートを利用するのです。そこでは問われるべき議論の質が、安易に量へと転換されてしまいます。これを「マスコミが演出する闇空間」と呼んだら、うがちすぎでしょうか。

三ヶ本万州夫

0 件のコメント:

コメントを投稿