2012年9月3日月曜日

アメリカ人は身分格差を顕示するため過剰なまでの消費をやめられない

>アメリカの所得格差は激しくなっている。1976年トップ10%の所得が全体の49%だったものが、データは古いが1999年には73%になっている。(76909)

小林さんが指摘しているのは資産格差の拡大であると思いますが、下位40%の人の資産を合わせても全米の資産の0.5%にしかならないそうです。

所得格差について補足しますと、アメリカでは、所得上位20%の世帯が1980年代以降そのシェアを拡大し、2000年には国全体の所得の約50%を占めるに至っています。逆に、それ以下の所得階層のすべてでシェアを縮小しています。さらに所得階層上位5%が国全体の所得の2割以上を占めています(米国商務省人口統計)。

つまり、資産(ストック)においても所得(フロー)においても富める者がますます富み、格差が拡大していっています。

これに消費性向のデータ(高額所得層ほど消費性向が高い)を勘案すると、次のようなことが見えてくると思います。それは、未だアメリカは、身分社会ではないかということです。その身分とは、白人のアメリカ市民であり、身分が上位である白人アメリカ人はそれ相応の暮らしぶりをしなければならないという意識があるのではないかということです。

>結果、大衆消費者(移民)たちは、まず「アメリカ市民」になろうとした。アメリカ市民であるとは、それらしくみえることである。郊外住宅に住み、守るべき財産と家族をもつことであり、物事を民主的かつ合理的に考えることであった。商品と結びついたデザインや広告は、この「アメリカ市民」らしく見せるにはどうしたらいいかを指示したのである。『アメリカの消費体質(2)』(15936)

その結果として象徴的なのが、アメリカでは所得階層と人種が連動していることです。家計の中位所得(家計水準で中央に位置する家計の所得)でみると、1970年以前から一貫して白人が上位で、黒人やヒスパニックは約7割の所得水準で推移しています。貧困層(4人家族で世帯年収18000ドル以下)は、全米で約3500万人(全人口の12.1%、2002年)おり、人種別人口に対する比率は黒人の24.1%、ヒスパニックの21.8%に対して、白人は8.0%に留まります。

また、アメリカでは企業のトップが高額な給与を得ていますが、CEOの給与が工場労働者の何倍かを示したデータでは、1980年に42倍だったものが、1990年には85倍、1997年には326倍になっています。ちなみに、売上高上位1500社で社長・副社長の地位についているマイノリティは男性で0.8%、女性で4.3%に留まります。

さらに、身分意識はキリスト教によって正当化され、強化されているのではないでしょうか。

>人間と動物を断絶する論理は、同様にキリスト教徒とそうでないもの、ヨーロッパ人とそうでないものなどを断絶し、ヨーロッパ社会の内部においてはユダヤ人に対する迫害であるとか、非常に根強い階層意識などを形成してきました。また、ヨーロッパ社会の外部に向けては度重なる略奪・殺戮行為であるとか、人種差別などとして発現してきました。『西欧と日本の階層意識の違い』(21959)

キリスト教信者はアメリカ人の9割近くを占め、毎週教会に礼拝に行く人はアメリカ人の4割、聖書の言葉を文義通り信じている人もアメリカ人の4割に達するという調査もあります。

白人が"選ばれた民族"であり、身分相応の消費と資産の保有→格差の拡大は当然のことと考える精神文化があるのではないかと思います。この身分意識は、国外に対しても向けられているかもしれません。

熊谷順治

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